見ている世界・生きている世界

白と黄色の鮮やかな水仙畑の中に二人がいた。

「綺麗だよな。」

二人のうちの一人、アーサーが言うと「そうですね。」

黒髪の菊が答える。青空の広がる下で風に当たっていた。
「あのさ…もう一つ一緒に行きたいところがあるんだけど…。」

ちょっと照れながらアーサーはつぶやくように言った。

「何処ですか?」

小さい声だったが菊にアーサーの声は届いたらしい。

二人は立ち上がって水仙畑を後にした。

 

「ハァハァ…。」

日は少しずつ傾き始めていた。

「何処まで行くんですか?」

すでに何時間か坂を上り続け、息切れをしている菊が問う。

「あと少しなんだが…。」

ちょっと前を進んでいるアーサーが振り返ると…ちょっとではない距離の間があった。アーサーはヘトヘトとゆっくり登ってくる菊のもとに駆け寄った。

菊は足を止めて小休憩を取った。
空がオレンジに染まる頃、やっと頂上に着いた。菊が休憩をしていると―――ヒョイッとアーサーに軽々と抱き上げられた。

「うわぁ!」いきなり自分の体が浮いた菊はびっくりした。

 

その声は驚きの声へと変わっていく。

アーサーが菊を塀の上に座らせると後から勢いよく跳び上がった。

塀の上から二人、座って見ている世界はオレンジに染まった町だった。

ミニチュアのようにも見える。

 

「綺麗ですね。」「だろ?」